研修事例

研修実施機関

実施機関団体名 国立大学法人 山口大学
住所 〒753-8511 山口県山口市吉田16771-1
電話番号 083-933-5800 FAX番号 083-933-5802
受講生人数 25名(中小企業経営者・従業員、農業者、支援機関等)

要 約

●テーマ

農商工連携による植物工場を活かした高品質な農産物生産と商品開発・マーケティング研修

ポイント

 農商工連携による植物工場産野菜の「安全・安心」「高品質」な生産を目指した体系的な基礎知識を備え、これらを活かした植物工場分野への新規参入事業計画の立案(商品開発・マーケティング)ができる人材を育成する。

1.動機と目的

 「植物工場」は、新商品・サービス開発や幅広い関連産業の集積が見込まれる農商工連携産業として注目され、特に西中国地方の中山間地域では地域経済浮揚の核として期待が高まっている。現在、このような地域における農業参入は、農業経験の少ない地元中小企業が行うことが多く、参入時の人材育成支援及び早期自立化に向けたフォローアップへのニーズは急速に高まっている。
 当大学では平成21・22年度経済産業省補助事業の「産業技術人材育成事業」として、従前より人材育成プログラムを実施しており関係者からの反響も大きく、実際に植物工場の起業や起業による雇用創出など多くの効果が見受けられている。
 そこで、本研修では、「農商工連携による植物工場を活かした高品質な農産物生産と商品開発・マーケティング研修」というテーマで人材育成に取り組むこととしている。具体的には、地域経済の動向や行政支援情報など、地域を取り巻く情勢をつかむとともに、植物工場を稼働する上で必要となる①それぞれの強みや地域資源を活かした商品企画、②植物工場参入時の経営判断に必須の「高度施設園芸・設備」の知識、③魅力ある商品を作り出すための生産管理技術、④「農業生産法人」の設立、事業計画など実践的な技術も習得する人材の育成を目指すこととしている。

2.研修内容

 当大学では、社会人が受講に際し、平日の業務に支障のない土日を中心として、7月23日~11月20日までの約4カ月間に講義研修28.5時間(19単位)、ロールプレイング研修7.5時間(5単位)及び実地研修18時間(6単位)の合計54時間(30単位)実施することとしている。
 研修は、全国中央会が作成した基本テキストをベースに、農業経験を持たない受講生や習熟レベル等を勘案し、各講師が独自に植物工場の経営・運営に必須となる基礎知識に重点を置いたテキスト(1講座30枚程度を基準)を作成する。講師には植物工場の運営に取り組んでいる技術者らも招聘し、実体験を通じた指導も行われ、より実践的な内容となっている。
■講義研修
 「1.植物工場における農商工連携の意義とねらい」を始め、高品質な植物工場産野菜の栽培と品種選択、機能性、光・病害虫・養液の管理・制御などを学ぶと同時に、安全・安心な植物工場産野菜を生産・販売するための衛生管理・生産物表示・農薬管理、IT化による栽培履歴と品質の管理、GAP(農業生産工程管理)の導入促進等、より具体的な内容となっている。
 また、当大学が一番力を注ぐとしているロールプレイングでは、中小企業診断士を講師に迎え、中山間地の農業及び中小企業の経営に即したコスト管理、民間コンサルティング企業による植物工場産野菜のマーケティングと地域ブランド化、中国地域において農業法人設立の支援方法等による講義を受けた後、自らで植物工場産野菜の事業化に向けた事業計画書を作成する。経営理念から取引先、事業資金、コスト、売上げまでを各自で作り上げ、グループワークを通じて各自が作成した事業計画書の課題点、解決のポイント、ノウハウ等について研究する。
■実地研修
 島根県出雲市にあり、農業に関する経営面及び技術面の支援等の事業を展開するとともに太陽光利用型植物工場運営を手がける民間企業の株式会社農援隊、また、埼玉県秩父市にあり、低硝酸なエグミの少ない甘くて美味しい野菜を生産し、高齢者や障害者の働く場を提供し、地域活性化に貢献している完全人工光型植物工場の運営を手がける民間企業の株式会社野菜工房と連携し、生産実習、収穫実習、流通・販売、商品開発、経営戦略等について、植物工場を展開している現場で生の声を聞くとともに、実際に受講生が作業体験を実施する(合計18時間(6単位))。

3.成果目標(今後考えられる成果)

 経営者または経営者の片腕となるべき人材に不可欠な「植物工場の高度な生産技術」から、「商品開発」、「市場分析」、「経営戦略」までの知識・技能を効率的に習得することができる。特に、ロールプレイング研修では、植物工場稼働に向けた具体的な事業計画書を作成し、実地研修では現場(植物工場)における作業体験を実施することにより、より実践的なスキルが身につけられ、早期に植物工場を導入する受講生が生まれることが期待される。また、植物工場が導入されることにより、農(育てる)・商(売る)・工(技術サポート)連携が強化されるとともに、植物工場への就職者も期待される。
 さらに、様々な業種・企業の方が受講生として研修に参加していることから、本研修を通じての企業間の横の連携交流の促進や行政機関との関係強化などの契機にもつながるものと考えられる。

4.受講生に対するフォローアップ

 研修終了後も相談窓口を開設し、随時、受講生に対する支援に努めることとしていく。具体的には、(財)やまぐち産業振興財団、山口県中小企業団体中央会などと協力体制を築き、受講生からの相談に対し、専門家を派遣して対応を行う。また、「商品開発」、「市場分析」、「経営戦略」等をテーマとした懇談会及び情報交流会等を開催し、農商工連携に取り組みやすい環境づくりを構築する。
 さらに、受講生が異業種間の横の連携をフルに活用できるように、当研修実施機関(国立大学法人山口大学)が研究開発の助言・指導を逐次実施し、個別の事案についての競争力強化・開発力の高度化が図れるような環境に努めることとしている。

5.研修視察より

 山口県、島根県及び広島県にまたがる西中国地域の農業生産現場においては、中山間地域の高齢化・耕作放棄等が喫緊の課題で、植物工場による農業経営体の若返りといった後継者の育成が大いに望まれている。また、長引く構造不況により、土木建設業や製造業等の中小企業の植物工場への新規参入計画は数多く、マッチングして中山間地域における新規企業参入による雇用創出への期待はきわめて大きいものがある。
 このような背景の下、当研修参加者は非常に多様性に富んでおり、当日は25名の受講生の参加していた。研修初日ということであったが、最初の講義から専門的な内容の鋭い質問や極めて実務的な質問が飛び交いタイムスケジュールをオーバーしながら進行しており、単なる座学を超えてまさに真剣な研鑽の場となっていた。

 今回の研修実施機関である国立大学法人山口大学は、植物工場研究コンソシアムの母体となって山口県内外の関連企業と連携し、植物工場に関連する研究開発、設立アドバイス、管理技術者育成に関する事業を推進しているこの分野におけるパイオニアと言える。本研修の募集においても志望動機として「何のために、何をやりたいか」をしっかり聞き確認することで目的意識を明確にした上での参加を促すなど人材育成研修の効果を最大化させる工夫が見られた。
 また、平成21・22年度に実施してきている経済産業省補助事業の「産業技術人材育成事業」等、従来までの研修は、「植物工場を作りたい」といった技術志向なものであったのに対し、今回の研修は植物工場で作るのにふさわしい商品、市場は何かといった「商品開発」「マーケティング」、さらには現実のビジネスとしてしっかり起業できる「事業計画」のアウトプットがプログラムとして計画されており、研修をより魅力あるものとしている。

 受講終了後、受講生からは、『植物工場および生産品の状況などが良くわかった。生産コストの低減はもちろんのこと新しい販路や消費者の認識改善などが課題』『農商工連携の意義と植物工場の概要について理解できた。「なぜ今植物工場なのか?」事業実施による効果等もう少し詳しく聞きたかった』『植物工場の導入に当たっては、「建築基準法」「消防法」からの制約についてもう少し詳しく聞きたかった』等の意見や要望が寄せられるとともに、『植物工場内において、温度・湿度、炭酸ガス濃度、照明の光量子束密度は、栽培作物ごとに調整されているのでしょうか』といった質問も寄せられている。当大学では研修全般に関する質問等を研修専用ホームページ内で行える体制が整えられており、受講生に対するフォローも充実している。さらに、研修は全て動画撮影されており、欠席者はもとより参加者がもう一度勉強したいという方がeラーニングによる受講も可能となっている。より受講生のニーズに答え、より効果的な研修内容となっており、当大学が狙った成果・効果は大いに期待できると考える。