研修事例

研修実施機関

実施機関団体名 株式会社経営技術研究所
住所 〒464-0075 愛知県名古屋市千種区内山3-28-2 KS千種303
電話番号 052-744-0697 FAX番号 052-744-0698
受講生人数 30名(中小企業者、農業者、学生、コンサルタント、金融機関等)

要 約

●テーマ

農商工連携により農業の効率化・省力化を図り、生産性を向上させるため、ITを導入した機械器具関連の商品・サービスを開発できる人材を育成する。

ポイント

 農商工連携に関心のある商工業の中小企業経営者・従業員を主な対象として、農業に対する理解を深めた上で、自社の技術やノウハウをもとに農業の効率化・省力化を図り、生産性を向上させるため、ITを導入した新商品や新サービスの開発に役立つ基礎的実践力を養成する。

1.動機と目的

 わが国の農業は高齢化が進み、他産業に比べ相対的に所得が低く、担い手の育成が問題となっている。農産物をそのまま生産・販売してきた従来のやり方だけでは、なかなか有効な展望が開けない。
 今後は、農産物の生産から流通、販売を含めた分野についても統合的に省力化・合理化を進め、各分野での付加価値を高める取組みが必要である。そのためにはITを導入した機械・器具関連の商品・サービスを開発し、農商工連携によって川上から川下までを一元的に管理する取組みが必要である。
 そこで、農林漁業者、加工および販売業者を対象にIT化(決算業務・ハウス栽培の自動温度管理等)、機械化(ゴボウ等長尺物の掘出し機、果物収穫時の自動昇降または移動車・自動選別機等)を進める人材を育成することとした。また、同時に各分野の連携を担う人材を育成する。

2.研修内容

 本研修は、次のような内容で実施する。
■講義研修(24時間)
 講義研修のカリキュラムは、農商工連携の理解から始まり、新たな農業生産の要となるITや機械化による生産性の向上、安全・安心の確保、消費者ニーズに基づく商品企画・開発の分野から流通・販売、ブランドにいたるマーケティングについて習得する。さらに事業経営の観点から必要とされる財務や商標権等についても理解を深めていく。
■実地研修(12時間)
 実地研修では、ITや機械化により効率化・省力化を図って、最新の技術や考え方に基づいて、新たな農業を模索している生産者を視察する。これにより農業の生産現場での経営課題や技術、ノウハウを把握して自社での新商品開発につなげられる内容となっている。
■ロールブレイング研修(9時間)
 講義研修と実地研修終了後に、ロールプレイング研修を実施する。ここでは、今まで研修で学んだことをもとに、「ITや機械化により農業の諸課題を解決するために自社の技術やノウハウを使ってどんな新商品が開発できるか」を実際に考える。個人で発想したアイデアをグループでブラッシュアップし、さらに全体発表を通じて情報共有することで、これから農商工連携に取り組んでいくに当たってのITを活用した製品・機械等のさまざまな着想を得ることとしたい。

3.成果目標(今後考えられる成果)

 今回の研修では、生産現場ばかりでなく植物工場の研究所を見学でき、わが国の先端的農業の現状を確認する。これにより受講生は、露地栽培と施設栽培の両方の栽培方法を見ることができる。実地研修先では、従来の農業と異なる大規模化と天候に左右されない農業のあり方も見せてくれることから、研修を通じ、自社の技術やノウハウを応用した将来の農業を支える手段やサービスについてヒントやテーマが得られる機会になると思われる。また、研修会を通じて他の受講生や実地研修先ともネットワークができ、今後の活動の幅広い展開が期待できる。
 なお、定量的な成果としては、農商工連携の意義と役割を認識した受講生30名の中から、80%の人が修了証を取得、平成24年11月までに新商品開発および新しい販売形態の事例10件、IT活用・設備合理化での生産性向上事例10件を目標とする。

4.受講生に対するフォローアップ

 研修終了後、受講生をメンバーとする「受講生の会」(仮称)を立ち上げ、定期的な情報提供・交換の機会を設けるとともに、必要に応じて「農業経営支援センター」および「愛知・食の安全研究会」によるフォローを受けられる体制を作る。また、両会の会員およびネットワークを活用して専門家を紹介・派遣するなど、農商工連携に取り組むに当たっての実践的なサポートを行う体制も構築する。

5.研修視察より

 8月2日(火)、イシグロ農材株式会社(愛知県田原市)で実地研修が行われた。当社が位置する愛知県田原市は、農業産出額が724億円、全国市町村第1位であり、半数を占める電照菊等の花卉を中心にキャベツ・ブロッコリー等の野菜等、収益性の高い農業が営まれている。研修には、中小企業診断士、器材メーカーの社員、椙山女学園大学の学生など22名が参加した。まず、大橋進吉社長室長からわが国の農業を取り巻く現状と田原市の農業およびイシグロ農材株式会社の目指す先進的取組みについての講義があった。わが国の農業の基礎的な数値から先進的施設園芸を経営していく上で必要とされる専門的なデータまで、スライドを使用して進められた。
 講義で、特に注目されたのはイシグロ農材の進める『複合環境制御』である。従来の施設園芸では、経営を維持するために重油を燃料とした冬季の暖房に重点が置かれていたが、重油価格の高騰、農産物の安値推移等の要因を考慮すると、現状のままでは売上高の減少とコストの増加による利益の低下が避けられない。施設園芸において重要な点は、いかに高品質な作物を安定的に生産するか、ということである。施設内の植物を良好に成長させるためには温度、湿度、二酸化炭素量、光線量等の管理が欠かせない。従来は、各々の要因を個別に管理していたが、『複合環境制御』では、それらの要因を一元的にコンピューターで管理することにより、施設内を24時間、植物の生育に理想的な環境に維持することができるようになっている。イシグロ農材では、施設の嵩上げ、LED照明、ヒートポンプ、外部遮光、二重被覆等の技術を組み合わせることにより「古いハウスのリフォーム」にも取り組んでいる。これまでの重油を中心とした施設園芸の農法を低炭素時代に合わせた持続可能な農法を確立するため他社に先駆けて独自技術を開発検証している。
 講義の後、実際の施設を見学した。トマトのハウスでは、オランダ製の『複合管理制御システム』が、ハウス内の各センサーから送られてくるデータをもとに、天窓の開閉、二酸化炭素の発生、液肥の施肥等を自動で管理していた。さらに最新の菊のハウスでは、電照設備、天窓の開閉、各種センサー電源等ハウスの維持に必要な電力の補助のため、天窓に太陽光パネルが設置されていた。
 参加者は、今回の講義、見学を通して、施設園芸の基礎と環境制御の重要性を学ぶことができた。安全・安心を求める消費者に高品質の農産物を継続的に提供しつつも、生産にかかるコストを下げ、二酸化炭素の排出量も低く抑えるためのノウハウが、これからの施設園芸には重要である。それらの技術と生産者を結ぶ人材を育成するためのきっかけとなる研修であった。