研修事例

研修実施機関

実施機関団体名 特定非営利活動法人 食の風
住所 〒900-0023  沖縄県那覇市楚辺1-14-39 2階 (有限会社楽園計画内)
電話番号 098-835-2540 FAX番号 098-836-5818
実施機関職員数 6名 受講生人数 40名

要 約

1.動機と目的

 沖縄県における農商工連携の活動は、観光業(商業)が主導とした連携体制が多く、農・工業関係者から発信される事業提案は相対的に少ないのが現状である。また、農商工連携を実施するために必要とされるコーディネーター育成に向けた取組みもこれまでのところ不十分である。そこで、本事業を実施することにより、農業に軸足を置いたコーディネーターの育成が可能になることで、より高次元での農商工連携の体制確立を目指している。
 本事業における第一の目的として、農商工連携を通じて地域の農産物の高付加価値化を図るには、「各種関係主体間のコーディネートを行うだけでなく、マーケティングやブランド化の観点から地域の農産物を熟知した人材が必要である」との認識から、コーディネーターとしての役割を担う人材を「沖縄食材スペシャリスト」として育成していくことをねらいとしている。
 また、第二の目的は、沖縄食材に関する知識を有したスペシャリスト、地元の加工事業者、地元観光・飲食業者、農業従事者等によるワークショップ等を開催し、関係者相互のネットワークを構築するとともに、国内外の観光客等に訴求する「ヌーベル・オキナワン・キュイジーヌ(新沖縄料理)」のレシピ開発や加工品開発を実施することとしている。

<事業推進のための協力体制確立>
 本事業を実施していくにあたり、特定非営利活動法人食の風が中心となり、産業支援機関(県内の商工会議所、商工会、JA中央会、中小企業診断協会、宜野湾マリン支援センター、那覇市ぶんかテンブス館等)、教育機関(沖縄大学等)及び食の風が今までの活動してきた取組みの中で、ネットワークを構築してきた人材と連携をとっていくことで、農商工連携を遂行していくうえで必要となる関連企業の紹介依頼や講師派遣、研修会場、農場等の視察先の提供等、連携支援体制を構築している。産業界には、基本的にこの島本来の伝統食材を有機農業にて営む農場等の視察に関して協力を依頼している。また、有限会社開発屋でぃきたんには、食品における表示やISOコンサルタントを依頼し、渋谷大学の講師やNHKのパソコン教室の講師を現役で務める有限会社オフィス創庵には、ITへの取組み方などの情報を提供していただくこととしている。

<案内ポスターとキックオフセミナー開催で全県に事業を告知>
 本事業を広く大勢の人に参加をしてもらうため、事業の告知については関係者の口コミと案内のポスターを各市町村の掲示板に掲載させてもらうべく、スタッフで手分けをして交渉を行い、すべて自分たちの手で貼り付けて回った。また、キックオフセミナーを開催して本事業の取組みの周知徹底を図った。キックオフセミナー開催にあたっては、沖縄県中央会、商工会連合会(沖縄におけるこの事業の他の実施団体)にも呼び掛けた。全国中央会にも支援を要請して事業の狙いや目的についての講演をいただいた。そのほか、行政や関係団体等の協力を得て盛大に開催したことにより、その様子はマスコミに報道され事業の認知が急速に進んだ。

2.座学研修内容

 座学は9月26日~11月15日まで土日を中心に6回に渡り、36時間の研修を行った。参加したメンバー40名とオブザーバーとして8名の受講者を迎え、沖縄食材等に興味を持っている地元沖縄の農商工関係者(農業従事者、飲食・流通関係者、加工業者等)、及び大都市部の団塊世代住民で沖縄食材に興味を抱く方々を主な対象として実施した。カリキュラムは共通テキストをベースとして、昨年度作成した「沖縄食材図鑑(沖縄食材スペシャリスト検定テキスト)」や沖縄県より発刊される様々な分野の資料をマーケティング教材として活用して進められた。前述のとおり、マーケティングやブランド化の観点から地域の農産物を熟知した人材が必要であるとの認識から、特に「ブランド戦略」や「マーケティング」に重点を置いた講義内容とした。講師については、各分野について知見を有する外部の専門家等や現役で活躍する農商工連携の従事者などを招聘し、これらの一連の講義研修を「食の風学院」として位置づけた。また、沖縄県農林水産部の元部長や農業学校での指導歴のある現職・前職の方々にも、実地研修の講師を依頼し、財団法人海洋博覧会記念公園管理財団の職員や沖縄協同青果株式会社にも講師派遣を行って頂き、今日の現場の諸事情や課題等の「現場の声」を聞く機会を最大限に活用することができた。
 そして、共通テキストのカリキュラムに加えて、独自で具体的なカリキュラムを追加し、沖縄県の特異性の気候・風土・地域に根付いた講義を実施したり、参加者同士の仲間意識を早期に醸成するために、2回目からはグループワークを導入したことにより一気にメンバー同士の交流が進んだ。

3.成果(今後考えられる成果)

 実地研修は、平成21年10月3日~平成22年1月31日までの4カ月間で実施した。実地研修は回数にして合計13回、時間にすると63時間実施した。当団体が必修講義と設定している時間数は、3日間の18時間であり、その他の実施研修は、各々が参加したいプログラムの中より、好きに自由参加できるように企画した。座学研修ではなかなか習得できない、または理解できない様々な内容を、現場での実体験を通し、それぞれの立場における事情や課題がわかるように意図した。

実地のカリキュラム内容は、主に以下の3つの内容で構成した。

(1)「農場実地研修とファーマーズ/フィッシャーマンズマーケットの実施」
 受講者(全員)はNPO法人食の風が運営する農園や宜野湾の大山ターム畑及び八重瀬のベストライフセンター等において、有機農法で行う沖縄伝統食材の農産物生産地において実地研修を18時間(1回あたり6時間)3日間で行った。希望する受講者(任意参加)については、東京六本木のミッドタウンや那覇市内の農連市場にて、ハイセンスなファーマーズ/フィッシャーマンズマーケットを実践し、農産物等の直販実践を6時間実施した。この研修を通じて受講者のマーケティング能力や販売事業実施に関わるノウハウの取得を支援するほか、受講者同士のネットワーク構築を図った。

(2)「ワークショップを通じたヌーベル・オキナワン・キュイジーヌのレシピ開発・評価」
 沖縄食材スペシャリスト資格を取得した受講者、地元加工事業者、地元観光・飲食業者、商社的機能を有する事業者、農業従事者によるワークショップ(1講義当たり3時間)を5講義、合計約15時間を開催し、「ヌーベル・オキナワン・キュイジーヌ」のレシピ開発・評価(コンテスト)、加工品開発を行った。テーマの1つとしては、ピンチョススタイルが課題となったワークショップを実施しており、参加者同士のネットワークの構築や農商工連携の基盤(プラットフォーム)づくりを行うことができた。

(3)「新聞でも報道された農村カフェでの実地研修」
 一部の受講者(任意参加)を対象にクラインガルテン(滞在型市民農園)の先進地視察を行い、地域活性化につながるクラインガルテンのノウハウの取得を図った。(2泊3日、計12時間)。 また、NPO法人食の風の付属農園において、研修の集大成として農村カフェを開店した。今回の研修において、沖縄の農林水産物の生産から販売まで一連の流れを学んだ受講生が、実際に調理や販売に挑戦し、今後、農商工連携のコーディネーターとして実践可能な企画作りが出来る人材となることを目的に取り組んだ。今回の実地研修の成果としては、トウガラシや紅いも、島人参などをふんだんに使ったカレーライスやレモングラスやミントのハーブティーは来店したお客様に対して好評であったり、紅いもは炊けるのに時間がかかり過ぎるため、カレーの材料として不向きなことを発見したりと実際に調理してみて初めて発見した驚きが多かった。また、沖縄では身近にありすぎて見向きもされないハーブであるが、調理次第で商品化できる可能性がある事を知ったのも大きな収穫であった。 研修場所(農村カフェ)は非常にわかりづらい場所にあるにもかかわらず、予定としていた来客数50名をほぼ達成した。話題性があれば客は探してでも来てくれることもわかり、次年度以降の展開について大きな可能性を見出すことができた。
 また、来店したお客様からの質問で、このような養成講座はどうしたら受講することが出来るかなどの質問が多数あり、農商工連携に対しての関心を持っている人が多いことも分かった。今回の様子は地元紙に写真入りで沖縄中に広く報道されたこともあり、今後、興味を抱いてくれる人が増えていくと思われる。来年度はもっと大勢の人に参加してもらい、今年の反省を踏まえてカリキュラムをさらに充実し、実践力を習得していけるように展開を図ることを検討している。

4.成果(今後考えられる成果)

 今回の受講生は様々な職業(分野)の方が参加され、受講生同士のネットワークや講習でお世話になった講師との連携が構築されたことで、地域に即した人材育成が出来たといえる。座学研修では、県内のキーマンに当たる講師の方々から生の声を聞く機会があり、土質の話からマーケティング・食品開発等の講義で学習した知識を、実地研修での体験を通して習得していったことで農商工連携等のコーディネーターやアドバイザーとしての活躍が期待できる。
 当団体の本事業における想定していた成果であった「沖縄食材スペシャリスト」の養成についても約40名の人材養成をすることができた。さらに、その内の数名については、地元の加工業者、地元観光・飲食業者、農業従事者等を構成員とするワークショップに参加し、加工品のほか、国内外の観光客等に訴求する「ヌーベル・オキナワン・キュイジーヌ(新沖縄料理)」のレシピの開発(4~5種類)にも成功し、受講生を派遣する企業(主に観光事業者、加工品事業者)等にとって、農業の視点から新たな商品・レシピ等の開発を行うことが可能になった。そして、当団体に「沖縄食材スペシャリスト」の資格を取得した従業員等がいることをPRすることができれば、新商品・新サービス等の開発、販売促進にもつながる成果が期待できると考えている。