政労使の意見交換において森会長が意見陳述

 「政労使の意見交換」が3月13日(水)首相官邸で開催され、全国中小企業団体中央会 森会長が出席した。

 会議では、令和5年11月15日、令和6年1月22日に開催した政労使の意見交換を受け、2024年春季労使交渉の集中回答日の機会をとらえ、今後、活発化する中小企業の賃上げの環境整備に向けて、労使双方の意見交換が行われた。

 意見交換において、森会長から、「中小対中小」の価格転嫁の改善等が急務であり、公正取引委員会による取組みにとどまらず、事業所管官庁が持つ情報源を活用した下請法の執行及び独禁法の優先的地位濫用行為規制の徹底等を要望するとともに、ものづくり補助金や省力化投資補助金、事業承継制度の改善等の支援策の活用による生産性の向上と攻めの経営への経営者のマインドの切り替えに全力で取り組む決意を述べた。

森会長 発言内容
 全国中小企業団体中央会 会長の森でございます。中小企業の足下の経営環境は、本会実施の「月次景況調査」によると、コスト上昇に対する価格転嫁が遅れていることに加え、個人消費も弱含みのため、製造業・非製造業ともに景況感が低下しています。配付資料の経営者の声にあるように、中小企業は人手不足・人材確保の問題が深刻化する中で、これまでの「防衛的賃上げ」などの対応による人件費の上昇が重なり、多くの業種で収益力の足かせとなっています。中小企業が継続的な賃上げを行うためには、景気の安定とマイルドな物価上昇が続くという見通しが必要です。

 このような中で、中小企業が物価を上回る賃上げを実現するためには、労務費を始め、原材料費等の十分な価格転嫁を進め、マークアップ率を高めていかなければなりません。そのためには、公正取引委員会の「価格転嫁ガイドライン」の、あらゆる取引段階における一層の浸透・実現が必要です。すなわち、サプライチェーンの下位企業や小規模企業ほど価格転嫁ができておらず、十分な価格転嫁と賃上げのためには、いわゆる「中小対中小」の価格転嫁の改善も急務であり、下請法の厳正な執行と独占禁止法の運用強化が必要と考えます。下請法の力強い執行に向けては、例えば、事業所管官庁と中小企業庁、公正取引委員会が持つ幅広い情報源を活用して、下請法の執行へと結びつけるようにする事などをお願い致します。独占禁止法については、サプライチェーンの下位の取引段階にも入り込んで、優越的地位の濫用防止などを図っていただくようお願い致します。

 一方、政府の数々の取り組みをより効果のあるものとするためには、中小企業経営者の意識改革も必要です。デフレ下での経営マインドを払拭し、勇気を持って取引価格を引き上げる事や単価を一方的に引き下げる悪しき慣行の廃止を求め、賃上げという「人への投資」を行うとともに、新しい製品の提供や市場の開拓による付加価値の向上という攻めの経営に舵を切るべきだと考えており、経営マインドの切り替えを訴えて参ります。

 加えて、継続的な賃上げの原資を生み出すために、ものづくり補助金、IT補助金、補正予算で講じられた省力化投資補助金の活用や賃上げ促進税制などの支援策を積極的に活用して参ります。また、賃金支払いのための資金の確保が重要ですが、4月に、ゼロゼロ融資の返済の次のピークが来る事への対応として、中小企業向けの資金繰り支援の期限を6月まで延長していただきましたことに御礼申し上げます。

 さらに、人手不足や後継者不足のために、廃業を選択する中小企業の増加が懸念されております。事業と雇用の継続のために事業承継に取り組む必要がありますが、事業承継は、経営資源を新たな分野などに向ける中小企業の成長促進策としても有効と考えており、事業承継税制の使い勝手の改善など一層のご支援をお願い申し上げます。

 中小企業の生産性の向上、継続的な賃上げを図る役割を果たすため、全国中央会も労務費等の価格転嫁の促進と生産性の向上と経営者マインドの変更に引き続き全力で取り組んで参ります。 

 全国中小企業団体中央会 提出資料(PDF形式)

 岸田総理大臣からは、物価上昇を上回る賃上げを実現するためには、中小企業の賃上げが鍵であり、賃上げの原資となる労務費等の価格転嫁を実現できるよう、下請法の厳正対処、労務費指針の取組みが不十分な事業者名の独禁法に基づく公表、対応が必要とされる22業種の取組み強化等、政府あげて取り組むなどの発言があった。

 また、最低賃金の引上げ額について、公労使三者構成の最低賃金審議会でしっかりと議論し、労働生産性の引上げ努力等を通じ、2030年半ばまでに1,500円を目指す目標をより早く達成できるよう、中小・小規模事業者の自動化・省力化投資、事業承継・M&Aの環境整備等について、官民連携して努力する、と述べた。

 総理の省力化投資及び事業承継・M&Aへの言及は、森会長の発言内容に呼応したものである。

 岸田総理大臣の発言は、首相官邸のwebページを参照。